研究分野

電子工学、電子物性・デバイス工学。
異種物質から成るヘテロ構造・混晶・ハイブリッド構造・ナノ構造など、自然界に存在しない新物質や新構造の形成、
それらの光/電子/磁気(スピン)物性の探索と制御、デバイス応用。
半導体と磁性(または強磁性体)の融合化とそのエレクトロニクスへの応用。
スピン自由度を生かした機能材料とデバイス、「スピントロニクス」の開拓研究。
量子物質の作製、スピンやスピン軌道相互作用も含めた量子状態の制御、量子情報デバイスへの応用、量子科学技術の開拓。

本研究室では、将来の電子デバイス、光デバイス、磁気(スピン)デバイス、それらのハイブリッド素子への応用を視野に入れて、新しい電子材料とデバイスの 基礎研究を行っている。具体的には、(1) 半導体、金属、半金属、強磁性体、超伝導体、トポロジカル物質など様々な物質を(縦横無尽に)用いて、量子力学的効果が現れるナノメータ・スケールの超薄膜や人工格子・量子ヘテロ構造 のエピタキシャル成長を行い、自然界に存在しない新しい物質を原子レベルで設計し作製すること、(2) 作製した新物質群のマテリアルサイエンスと物性物理を研究し、デバイスを試作して将来のエレクトロニクス応用への指針を示すことをめざしている。特に、電子のスピンやその秩序(磁性)が顕著に現れる新しい物質群の創成とそれらの半導体エレクトロニクスへの応用:「スピントロニクス」の開拓研究、およびスピン状態をはじめとする量子状態の制御と量子科学技術の研究に力を入れている。

現在の研究テーマ(詳細は最近の発表論文・著書リストもご覧ください)

  • 強磁性体/半導体ハイブリッド構造
  • 新しい III-V族ベース磁性半導体とその量子ヘテロ構造
  • 半導体中への磁性元素のデルタドーピングとそのヘテロ構造、強磁性秩序の高温化
  • 半導体/強磁性体ナノ微粒子構造の形成、物性探索、機能設計、デバイス応用
  • 半導体ヘテロ構造中のスピン依存伝導、磁気光学効果、スピン制御とそのデバイス応用
  • 半導体をベースとしたエピタキシャル強磁性トンネル接合デバイス
  • 新しいIV 族ベースの磁性半導体、磁性体/半導体ハイブリッド構造
  • スピントランジスタ(Spin MOSFET, Spin-Filter Transistorなどの提案・解析・作製)
  • スピントランジスタを用いた新しい再構成可能な論理回路の提案・解析
  • スピンデバイスのプロセス開発と試作
  • 新しいトポロジカル物質/半導体ヘテロ構造、量子物質の開発と機能制御
  • 超伝導体/強磁性半導体ヘテロ構造の形成と電子物性、量子情報・デバイスへの応用
  • 学生や研究員の自由な発想に基づく研究

私たちの研究室では、将来の電子デバイス、光デバイス、磁気(スピン)デバイス、それらのハイブリッド素子への応用を視野に入れて、新しい電子材料とデバイスの基礎研究を行っています。具体的には、(1)半導体、金属、半金属、強磁性体など様々な物質を(縦横無尽に)用いて、量子力学的効果が現れるナノメータ・スケールの超薄膜や人工格子・量子ヘテロ構造のエピタキシャル成長を行い、自然界に存在しない新しい物質を原子レベルで設計し作製すること、(2)作製した新物質群のマテリアルサイエンスと物性物理を研究し、デバイスを試作して将来のエレクトロニクス応用への指針を示すことをめざしています。特に近年は、電子のスピンやその秩序(磁性)が顕著に現れる新しい物質群の創成とそれらの半導体エレクトロ ニクスへの応用: 「スピントロニクス(Spintronics)」の開拓研究に力を入れています。

スピンとは? 電子は負の電荷をもつ素粒子であることはご存知でしょう。トランジスタの発明以来、20世紀後半のエレクトロニクスや情報技術(IT)の発展は、主に電子の電荷を用いた様々な半導体デバイスによってもたらされました。一方、電子はもう一つ“スピン”という本性を持っています。スピンは量子力学の概念ですが、古典力学の言葉で言えば電子の自転に相当します。この自転は決して止まることがないので、電子はそれ自身が小さな電磁石であるとも言えます。つまり”スピン”を持つことによって、電子は世界最小の永久磁石であるとも言えるのです。(余談ですが、世界最大の磁石は…? それはもちろん地球です)。電子の”スピン”の働きと電子同士の相互作用によって、ある物質は永久磁石のような強磁性になり、またある物質では電気抵抗がゼロになる超伝導を示したりします。

スピントロニクス ところがエレクトロニクスや情報通信技術を担う半導体においては、電子の電荷のみが主に使われており、もう一つの自由度である”スピン”が使われることはありませんでした。私たちは、21世紀の半導体テクノロジーにおいてはこの”スピン自由度”を積極的に用いる必要があると考えており、「スピンエレクトロニクス」と呼ばれる新分野を開拓しています。この分野は約約四半世紀前からの 私たちによる先駆的研究の貢献もあって、現在では世界的な新しい研究の流れになっています。このようなサイエンスとテクノロジーのフロンティアを切り拓く研究では、エレクトロニクスやIT技術への幅広い関心と共に、量子力学や物質科学など基礎科学への深い理解と知的好奇心が必要になります。

― 研究テーマ例(他にも様々あり)―

  • 強磁性やスピン依存物性を示す新しい半導体物質、ヘテロ構造、ナノ構造を創る結晶成長
  • 強磁性半導体やそのヘテロ構造が示す光・電子・スピン物性の解明と制御
  • その光・電子・スピンデバイスへの応用
  • 半導体磁気光学結晶の作製と光の局在を用いた磁気光学効果の増大と光デバイスへの応用
  • 半導体ヘテロ構造のトンネル磁気抵抗効果(TMR)とスピン依存トンネル現象の物理
  • 半導体:強磁性体複合ナノ構造の形成とスピン依存伝導現象、そのデバイス応用
  • エピタキシャル強磁性金属/半導体ヘテロ構造の結晶成長と物性、デバイス応用
  • スピンバルブ効果、スピントンネル磁気抵抗効果など電子伝導現象を中心とした不揮発性メモリ(MRAM)の基礎研究
  • スピンデバイスの微細加工プロセス、デバイスの試作
  • スピンの自由度を活用したスピントランジスタ、スピンMOSFETの提案・解析
  • スピントランジスタ、スピンMOSFETの動作原理、デバイス物理の研究
  • 量子異常ホール効果、マヨラナ束縛状態、トポロジカル量子状態、スピン三重項超伝導など、新しい物性物理の開拓と量子コンピューティングに向けた量子材料とデバイスの研究

大学院に入学を希望する学生 の皆さんへ

 本研究室では、マテリアルサイエンス・デバイス・物性物理学・結晶工学など Science と Technology の広い領域にまたがる新しい分野を開拓しつつあり、取り組むテーマも斬新なものが多くあります。博士課程はもちろん修士課程や卒業論文の若い学生でも、努力次第では 比較的短期間で研究の最前線に躍り出ることが可能であり、そうなるように後押ししています(実際すでに何人もの学生が国際会議などで発表し、学会の最先端で活躍しています)。サイエンス志向の人は知的好奇心をもって深く真理を探求してもよいし、エンジニアリング志向の人はデバイス設計/試作まで何でも意欲的に取り組んでみればよいでしょう。フロンティアスピリットと意欲あふれる学生の入学・進学を歓迎します。このような新分野の研究を様々なアプローチから行うために、国内・海外の優れた研究機関との共同研究も積極的に行っており、産業技術総合研究所、東京大学理学系物理学専攻、工学系物理工学専攻、物性研究所、SPring-8などの研究グループとも共同研究実績があります。

 研究とは、「世界の誰も知らない未知の何かを発見すること、誰も答えを知らない未解決の課題を解決すること、誰もつくったことがない何か(材料、デバイス、理論、概念など)を創造すること」であり、決して片手間で短時間にできるようなものではありません。研究とは、創造的な行為であり、全身全霊を尽くしてはじめて成果が得られるものです。研究成果には、「新規性(originality)」、「スピード」、「インパクト」、「完成度」のどれもが必要です。研究室では、具体的な研究テーマに真摯に取り組むことを通じて、新しいものを創造することの価値、方法論、科学的・論理的な思考力、他者との協力や協同の精神、失敗からの学び、世界との競争、成果の発信、批判や批評への対応力…といった様々なことを学ぶことができます。粘り強い長期間の努力を必要としますが、どのようなテーマであれ真摯な研究によってはじめて達成される「何か」は、経験した者にしかわからない充実感をもたらすものです。これは、「研究」を「ビジネス」や「マネジメント」や「創造的な仕事」や「人生」に置き換えても基本は変わらないでしょう。卒業論文や大学院では、「研究」に真剣に取り組むことを通じて、「創造することの意味」を学び、その後の長いキャリアと人生の糧を得る場であると言えます。

研究室の見学希望など随時受け付けています。 
連絡先: 田中 雅明 教授
Email: masaaki[at]ee.t.u-tokyo.ac.jp 
([at]を@に置き換えて送信してください。)

東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻のページ http://www.eeis.t.u-tokyo.ac.jp/ および 電子情報工学科・電気電子工学科のページ http://www.ee.t.u-tokyo.ac.jp/j/ も参照して下さい。大学院入試や専攻、学科に関する情報があります。

大矢研究室中根研究室アイン研究室小林正起研究室などと緊密に協力し共同研究を行っています。

卒業生の就職先、在籍研究者の進路

  • 研究員、助教、准教授、教授: 東京大学、東京工業大学、東北大学、東京農工大学 など
  • 博士課程修了生: 東京大学工学系研究科、JST博士研究員、東京大学先端科学技術研究センター、東京農工大学、東京工業大学、筑波大学、NTT物性科学基礎研究所、SanDisk、東芝、ソニー、住友化学、東京エレクトロン、キオクシア、Western Digital、Micron Memory
  • 修士課程卒業生: KDDI、JR東海、古河電工、松下電器産業、NTTドコモ、日本IBM、ソニー、トヨタ自動車、日経BP、パイオニア、東芝LSI、富士通、デンソー、オリンパス、東京電力、関西電力、四国電力、文部科学省、国土交通省、野村総研、IIJ,、カリフォルニア大学、アリゾナ州立大学 など
  • 学部卒業生: ほとんど大学院に進学